あとがき

原案とあらすじを担当した藤浦です。最後まで読んでいただきありがとうございます。
この本は、奇跡の本です。なぜかというと、一度は出版することを諦めた本だからです。
実は、出版社の方とこの本を書く話が決まってから出版に至るまで二年半近くの歳月がかかっています。
その原因は、私の執筆が全く進まなかったからです……。
当初、執筆を甘く見ており、出版社の女性が「藤浦さんなら本書けますよ」とおだてるもので、「実は私、小説を書きたいんです!」なんて調子のいいことを言ってしまいました。
今思うと、これが苦悩の日々の始まりでした。
実際に書き始めてみると、一行書いては書き直し、また一行書いては書き直す日々で全く原稿が進みませんでした。そうです、書き始めてから気づいたわけです。私は小説の書き方も知らなければ、そもそもまともに小説を読んだこともないと……。
確かに日々ブログなどを書いていたので文章を書くことには慣れていました。しかしそれは、あくまで好き勝手に書き殴った文章であり、繊細な情景描写を必要とする小説では全く通用しませんでした。
また、自分の事業との時間のバランスを取ることも難しく、次第に執筆に当てる時間が少なくなっていきました。
そんなこともあり、出版社の方から「原稿の進み具合はいかがですか?」というメールが来ては目を覆いたくなり、「もう書けません」といつ言い出そうかと真剣に考えていました。

そんな中、私の目の前に奇跡が起こります。それは、私の拙いあらすじを小説に仕上げてくれた、もう一人の著者である東一輝さんと出会ったことです(普段、東さんなんて呼んだこともないので、その名前で紹介するのは違和感いっぱいですが……)。
彼女とは、私がやっている学生向けのキャリア面談の場で偶然出会いました。彼女? 学生面談? はい、東さんは女性であり、学生でもあります。つまり、現役女子大生です(わぉ!)。
そのキャリア面談の中で、「小説を書くのが趣味です」なんて話を聞いてしまった私は、咄嗟に「私の小説を書いてくれませんか?」と、出会ったばかりの女性に「結婚しましょう!」と言わんばかりの告白をしてしまったのです。
正直、初めは「冗談ですよね」といった苦笑いで流されてしまったわけですが、この奇跡的な出会いを逃してはならないと思い、後日改めて「本気で私の小説を書いてくれませんか」と告白し直したわけです。
その二回目のプロポーズを快く受け入れてくれた東さんのおかげで、この本が世に出ることができたわけです。これはもう奇跡としか思えません。

さて、そもそもなぜこの本を書こうと思ったのかといいますと、それは自分自身がサラリーマンを辞めて起業したことをきっかけに、これまでに出会うことのなかった魅力的な人や書籍と出会い、世の中の見え方が百八十度変わったことにあります。灰色にくすんだ世界が黄色のキラキラした世界に見えるようになったのです。

正直、若い頃の私は荒んでいました。別にチンピラをやっていたわけではないですが、世の中の全てを斜に構えて見ていて、心の中では自分よりも劣る人間を見つけては馬鹿にし、自分よりも優れた人間を見れば嫉妬して批判ばかりしていました。つまり、とても性格が悪かったわけです……。
それでも人に嫌われないように内面を覆い隠すことで、社会とは上手に付き合っていました。ただ、心の中では建前だらけの自分に息苦しさを感じていました。それは、そんな自分を心の底から好きになれず、愛せなかったからです。
正直、以前は「性格は変えることができないもの」だと思い込んでいました。ですが、私自身が素敵な人や書籍と出会ったことで性格が少しずつ変わり、自分を好きになれることを経験したのです。ですから、同じようにつま先立ちで疲れきっている人、自分を好きになれずに息苦しさを感じている人に、もっと楽になれる方法を伝えたいのです。

あるがままに生きることが幸せだという類の考え方が世の中に出回っています。しかし、内面を磨かずにあるがままに生きたところで本当の意味で幸せになれません。それは、世間からの目を無視した自己中心的な生き方でしかないからです。あるがままに生きることで世間からも愛される生き方にこそ本当の幸せがあるのです。
そのためには、内面を徹底的に磨くことが不可欠です。本書はその考えを基に、それを実現するための気づきを靴磨きのおっちゃんやばあちゃん先生の教えとして散りばめています。本書から少しでも気づきを得て、今後のみなさんの人生が豊かになることを願っています。

最後に、この本を手にしてくれたみなさん、そして、この本を書くにあたって様々な考え方や価値観を教えてくれたみなさんに感謝いたします。

平成二十九年六月二十六日  藤浦隆雅